作家、平野啓一郎さんの著作です。
この本の内容を私なりにちょー簡単に要約すると、
唯一無二の「本当の自分」といった概念にこだわらず、関わる相手ごとに違う自分で良い
といった説明になります。
誰を前にしても同じ自分でいようとするのは難しいですよね?
もしかしたら今の10代20代の方たちには薄い感覚かもれませんが、
「本当の自分でいないといけない」「人によって態度を変えるのは良くない」などの観念が、私が10代の頃はまだありました。
でも実際に社会生活を送るうえではそんなふうに生きるのは不都合が多いし無理があります。
この本では、人が相手によって振る舞いや感情を変えるのは自然なこと、むしろ、相手を大切に思うからこそ、相手に合わせて自分を変化させるべきと書かれています。
10ある自分を分けて、例えば恋人に5、友人に3、職場の同僚に2などと配分するのが、この本の「分人」という考え方です。
ただし、振る舞いを変えるのは自分のためではなく相手のためでないと、いわゆる悪い意味での「八方美人」になるとも書かれています。
そもそも日本において、「個人」という概念の歴史はそう長いものではありません。
明治期、西欧の文化や哲学が輸入されることで入ってきた概念です。
それから太宰治などの作品の流行もあり、「本当の自分」「仮面の自分」などの概念が一般化していったそうです。
それまでの日本では、「分人」的な生き方に疑問などなく、仏教的には「自分」へのこだわりなんて持つべきものでもなかったんだろうと思います。
木村敏という哲学者は、自分というのは「もの」ではなく「こと」、つまり現象であると表現しています。
このあたりの話は私の大好物なので、また別の記事で書いてみたいと思っています。
今回は、一般的に馴染みのある「個人」という概念に分かりやすく相対する「分人」という概念を使って「私とは何か」を考えている本を紹介しました。
「自分らしさ」とか「ほんとうの自分」などの概念にまつわる思索に関心がある方は、以下のような記事も興味を持ってもらえるかもしれません。
処分に困っている専門書ありませんか?
専門書を大手の古本屋の査定に出すと、買った価格の割に「安いなぁ」って思うことありませんか?
専門書に特化した買取店があります。2社のサイトを載せてます。比較・検討してみてください。

