【実例】障害者福祉の仕事 就労継続支援事業編1

就労継続支援事業所への就職を検討している方へ

就労継続支援事業所の仕事のイメージがより具体的になるように

今回は、私が勤めていた就労継続支援事業所(A型)の利用者さんとの関わりを書いてみたいと思います。

利用者さん情報

Yさん 

18歳 男性

中度知的障害

特別支援学校を卒業後、当就労継続支援事業所の利用を開始

Yさんは支援学校在籍時、不登校であったらしく、この事業所の利用を始めたばかりの頃も欠勤が日常的でした。

生活が昼夜逆転しており、寝過ごしての無断欠勤もしばしば。

出勤をしても表情が硬く、職員の挨拶や声掛けにも反応が鈍く、それどころか、反応が無いことも珍しくありません。他利用者からの声掛けには、睨み返すだけのことも。

ただ、作業については、職員が教えれば割と早く覚えられる能力のある方でした。

この事業所では、食品の製造と地域住民への訪問販売を利用者の方々の作業としていましたが、Yさんの特徴を鑑みて、まずは製造を担当してもらっていました。

また、事業所の方針として、職員は作業を教えたり見守ったりはしますが、基本的には、利用者さんのみで作業を行えるよう支援していくようになっていました。

なので、訪問販売に関しては利用者さんだけでお客さんの自宅に行けるよう支援をし、大丈夫そうであれば、本当に利用者さんだけでお客さん宅に行ってもらっていました。

つまり、販売を担当するには、それなりの能力が求められるため、販売担当の利用者さんは限られています。

ある時期、販売担当の利用者さんが体調を崩したり、サボり気味になったりで、販売要員が足りなくなる事態になりました。

そこで、代打でYさんに販売に行ってもらうことになりました。もちろん、まずは職員がついていく形で。

Yさんに販売をしてみないかと尋ねたところ、「まあ……いいですよ」と、感情が読み取りにくい反応でした。

販売を始めて日が浅いうちは、「ありがとうございました」などの定型文を機械的に発するだけといった感じでした。

しかし、少しずつ、一緒に販売に行く他の利用者さんの動きを先回りしてフォローができるようになったり、作業に積極的な様子が見られるようになったりしました。

私との関係性も形成されつつあり、笑顔で冗談を交わせるようになりました。

ところが、接客の場面では、なかなか表情や態度、言葉遣いが柔らかくならず、不愛想で不器用なままでした。

私が「もう少し明るい声で挨拶をしよう」「お客さんが背を向ける前にお客さんに背を向けないように」などの声掛けをすると、その具体的な部分については改善するのですが、一連の常識的な振る舞いになりません。

他人の振る舞いを見て真似をする

相手の表情を見て振る舞いを変える

といったことも難しいみたいでした。

この方はいわゆるオタク系のアニメが好きでした。

そこで、私は

「お客さんの前では後輩キャラになろう」

という声掛けをしました。

私自身もおどけながら後輩キャラを演じて、ちょっとした寸劇をしてみせたりしました。

この一言がきっかけになったとは思いませんが、

そのくらいの時期から、Yさんの成長は加速していきました。

だんだんと振る舞いが洗練されていき、全体的に所作が丁寧になっていきました。

それまでの、一つのことを言って一つのことが改善するという印象ではなくなり、

いつの間にか、接客者として尊敬できる人になっていました。

ある日、ルート販売に同行したときのこと

この事業所では、毎年決まった時期に、事業所が加盟している運動団体の署名活動を行います。

その日も、商品を購入してくださったお客様に署名協力の声掛けを行っていました。

基本的にできるだけ声掛けをする方針で、Yさんも精力的に署名協力のお願いをしていたのですが、

あるお客様に対して、あえて声掛けを控えたように見えました。

後でYさんに、なぜそのお客様にだけ声掛けをしなかったのか理由を尋ねたところ、

「なんか、あんまりしたくなさそうだったから」

との答えでした。

私は感動しました。

確かに、そのお客様は急いでいたのか、家族の言われて商品を取りに出てきたのか、少なくとも機嫌の良い雰囲気ではなく、私でも署名活動に協力して欲しいとはお願いしにくい方でした。

Yさんが相手の表情や雰囲気を見て、このように瞬間的に機転を利かせることができたのが驚きだったのです。

元々そのくらいできる能力を持っていたのかもしれませんが、

Yさんは、この事業所の職員からは、自閉症スペクトラム的な性質があると思われていました。

自閉症状があると思われている人が、接客を通して自分の潜在能力を発揮し、社会性を身につけ、私たち職員を驚かせる様を目の当たりにし、Yさんには失礼かもしれませんが、鳥肌が立ちました。

これは、私が就労継続支援事業所で勤めた中で、数少ない”関わりが実を結んだ”と思える体験です。

私の支援が上手だったとか、そんなつもりの話ではありません。

就労継続支援事業所の仕事のイメージが湧かない方へのご参考に

もしくは、事業所に勤め始めたばかりで、日々の業務に結果が伴うのか見通しが立たなかったり、意義を感じられず悶々としている方に

こんな素敵な結末が、たまにはありますと伝わると嬉しいです。

今回は以上にして、他の支援例も書いてます。

【実例】障害者福祉の仕事 就労継続支援事業編2

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