就労継続支援事業所への就職を検討している方へ
就労継続支援事業所の仕事のイメージがより具体的になるように
今回は、私が勤めていた就労継続支援事業所(B型)の利用者さんとの関わりを書いてみたいと思います。
・利用者情報
Nさん
30代後半 男性
うつ病
一般就労を経験後、うつ病が発症し入院。退院後、当事業所の利用を開始。
私が当事業所に就職したばかりの頃、Nさんは既に当事業所を利用していましたが、病状が不安定で、毎日通所することに自信がないため、事業所の利用日数を週2日と決めていました。
しかし、その週2日でさえ、病状によっては利用しないことも珍しくなく、
1~2か月間に渡って休むことも何度かありました。
Nさんは当事業で、はじめは食品の製造をしていました。
当事業所の食品製造の現場は、知的障害や発達障害、精神障害、身体障害など、様々な障害の方がいて、とても静かとは言えない、混沌とした空間でした。
私は、Nさんには、この混沌とした空間が重荷になっているのではないかと考えていました。
Nさんは、元は一般の学校を出て一般就労をしていた方であり、知的な部分での目立った障害は無い方でした。
なので、知的障害や発達障害の方とは一線を引いているところがあり、気に障る言動をする他の利用者と同じ空間にいることを受け入れ切れていないように私には見えたのです。
当事業所は食品製造以外にも、内職作業やポスティングの下請けをしていました。
そこで、私はNさんに下請け作業をしないかと提案してみました。
下請け作業は、職員の中では主に私が仕切っていたため、比較的、私の裁量で事を進めやすく、
私は作業の進め方や割り振りなどをNさんと相談しながら、Nさんが作業の中心的役割をするように運んでいきました。
Nさんは知的障害はないものの、抗精神病薬の副作用か、元々の資質か、注意が欠けているところがあり、他の利用者さんで、より安心して仕事を任せられる方はいましたが、
Nさんの(失礼な言い方になるかもしれませんが)仕切りたがりな性格を生かして、責任のある作業を任せることにしたのです。
それから、少しずつNさんは変わっていきました。
利用を休むことが減り、それどころか、元々週2日だった利用日数を週3日、週4日と増やしていきました。
病状も安定してきて、うつ状態になることはあっても、2週間以上続けて休むことは無くなりました。
私との関係性も形成されていきました。
今思うと、支援員という立場上、軽率で未熟な関わり方だったのかもしれませんが、私の個人的な悩みを話したり、ざっくばらんな言葉遣いをしたりしました。
もちろん、Nさんは年上で人生の先輩であるので、敬意を払いながらです。
Nさんも私に対して心を開いてくれて、Nさんの生い立ちや家族関係、うつ病の発症に至った経緯、現在の生活のプライベートな話などを打ち明けてくれるようになりました。
私が当事業所に勤めて3年が経過し、退職することをNさんに話してから数日後、
Nさんは「僕も次に進もうと思う」とおっしゃいました。
それまでも、Nさんは一般就労をしたいという思いを口にしてはいたのですが、具体的な行動には移っていませんでした。
しかし、Nさんは「A君(私のこと)がいなくなったら、いよいよこの施設を利用し続ける気にはならない」
と言い、私が退職してから数か月後、当事業所の利用を止め、一般就労を目指して就労移行支援事業所の利用を始めました。
一応言っておきますが、私がそれだけ好かれていたと誇っているわけではありませんよ?
私が辞めたせいで利用者が利用を止めたということは、見方によっては、事業所全体として、その利用者と良い関係性が築けていなかったということかもしれませんし、私が適切な支援が出来ていなかったという可能性もあります。
しかし、Nさんとは、その後もプライベートで連絡を取り合ったり、お茶に行ったりする関係が続いており、Nさんの病状が安定し、かつ、一般就労に向けて前向きに活動し充実している様子を見ると、
私の退職が良いきっかけとなったなら結果オーライだと思っています。
ちなみにNさんの就職活動は、コロナの影響もあり、難航しているようです。
Nさんに対する関わりは、私の未熟な部分もたくさんありましたが、良かった点を挙げるなら
Nさんに“替えの利かない役割を担ってもらった”点だと思っています。
元々休みがちであったのが、重要な役割が増えるに従い、精神的にも体力的にも安定していったのではないでしょうか。
就労継続支援事業所の仕事のイメージが湧かない方へのご参考に
もしくは、事業所に勤め始めたばかりで、日々の業務に結果が伴うのか見通しが立たなかったり、意義を感じられず悶々としている方に
こんな素敵な結末が、たまにはありますと伝わると嬉しいです。
他の例もご参考にどうぞ。
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