【実例】障害者福祉の仕事 就労継続支援事業編3

就労継続支援事業所への就職を検討している方へ

就労継続支援事業所の仕事のイメージがより具体的になるように

今回は、私が勤めていた就労継続支援事業所(B型)の利用者さんとの関わりを書いてみたいと思います。

・利用者情報

Mさん

30代後半 男性

統合失調症

精神科病院に長く入院しており、退院後、当事業所の同法人のグループホームを利用しながら、当事業を利用。

Mさんは他者との関わりが苦手で他利用者と仕事を共にするのは難しいので、職員がマンツーマンで行うか、一人でもできる軽作業のみをしていました。

関わりが苦手というのは、

他者のあいさつや声掛けに反応しない

他者に冷たい態度や言葉を使う、など

例えば、

私が当事業所に就職したての頃、地域住民宅への訪問販売を一緒にしているときに、まだ道もお客さんの家も覚えていない私に対して「前を歩いて」と、おそらく意地悪で要求してきたり、

道を歩いているときに、後ろから石を蹴ったり、

急に立ち止まってついてこなくなったり、

いつも購入してくださるお宅に訪問せずにわざと通り過ぎたり

休憩中の、体調はどうですか、とか、雨が降らなくてよかったですね、などの声掛けに対して、

「は?なんでそんなこと聞くの?」「自分で考えれば?」という返しをするのは定番でした。

「君のこと嫌いなんだよね」「君とは仕事したくない」というセリフも、おそらく全ての職員に言ってます。

もちろん、毎日そんな風ということではなく、調子が良い日は妙に優しかったり穏やかだったりするのですが、

調子が悪い日のこうした振る舞いのため、そもそも他者を寄せつけない方でした。

こうした振る舞いは、利用者・職員を問わず、だれに対しても同じでした。

全ての職員がこの方との関わりを嫌がり、この方とのマンツーマン作業を担当する職員にとっては、かなりのストレスとなっていました。

私もはじめの半年くらいは、嫌で嫌で仕方がありませんでした。そして、半年過ぎたあたりからは、この方と作業をする時間は、心を“無”にしていました。

何も期待しないし、何をされても何も考えないよう心掛けて、ほとんどMさんへの支援は放棄していました。

2年ほど経ってからのことだったと思います。

相変わらずやけくそ状態でMさんと作業をしていたときのこと

この日のMさんは、やたらと職員に突っかかってくるモードのMさんでした。

Mさんは私に対して「なんか俺にだけ冷たくない?」と言いました。

私は苛立つこともなく、やけくそで言い放ちました。

「Mさんにだけ冷たくしようとしているつもりはありませんよ。でも、Mさんがそう感じるのであれば、そうかもしれません。だって、いつもMさん、私のことを無視したり、冷たい態度をとりますよね。今日も私のことを無視していましたよね。だからMさんには話しかけにくいし、話しかけたくないです。だからといって、仕事中は態度に出さないように気をつけてはいますけど、そういう気持ちが出てしまっているのかもしれません。」

するとMさんは、呆気に取られたように私を見つめ、3秒ほど間をおき、何も言わずに作業を再開しました。

しばらくして動きを止め、

「納得できん」と言いました。

私は言ってやったという高揚感があり、

ドヤ顔で「何がですか?」と言い返しました。

この出来事がMさんと私の関係性にどのように影響するか、内心、気になりながらも次の日、また次の日と時が過ぎました。

振り返ってみると、その出来事を経てからだと思います。

私は、Mさんに対して心が動じなくなりました。

以前は、”無”にするよう心掛けていましたが、それは自分の感情を管理する労力が必要で、ある意味、激しく気持ちを消耗していました。

しかし、この出来事以降は、Mさんに対して「かかってこいや」的な、肝が据わったような感覚になり、

他の職員が相変わらずMさんに対するストレスで体調を崩したり、Mさんとの関わりから逃げるのを、気持ちに余裕をもってカバーできるようになりました。

私の気の持ちようが変わったからそう見えるのかもしれませんが、Mさん側の私に対する振る舞いも変わったように思います。

私に対しては、以前のような、あからさまな意地悪な振る舞いはなくなり、

だからといって、避けたり恐れたりしている様子でもなく、

フラットな自然な雰囲気で話せるようになりました。

以前より笑顔も多く見られ、私のことを褒める発言をしてくださるようにもなりました。


Mさんとの関わりは、私にとっては自信になった例の一つなのですが、

なぜ、こうした結果になったのか、Mさん側の理由については、正直、私自身、いまだに分析できない部分です。

私が噛みついたから意地悪はやめたのか?

心でぶつかり合える相手が欲しかったのか?

私の裸の心を感じて安心したのか?

単に私の頑張りを認めてくださったのか?

Mさんの気持ちを聞くことはなく当事業所を退職したので、Mさんの気持ちを理解することはできません。仮に在職時にMさんに気持ちを聞いたとしても分からなかったと思いますが。

ただ言えることは、長い時間がかかりましたが、Mさんに対する私の感情労働が、なんとかそれなりの結果として実ったということです。

福祉の仕事、特に就労支援の仕事は、こうした感情労働をしなければならない場面が多いと思います。福祉業界への就職を検討している方はご覚悟を!

就労継続支援事業所の仕事のイメージが湧かない方へのご参考に

もしくは、事業所に勤め始めたばかりで、日々の業務に結果が伴うのか見通しが立たなかったり、意義を感じられず悶々としている方への励ましになれば嬉しいです。

ちなみに、この記事の冒頭の利用者情報の部分でMさんの統合失調症という情報を書きましたが、

統合失調症という病には色々な特徴があるため、一言で統合失調症といっても様々な様相があります。

さらに、患者さんには一人ひとりの性格や経歴、家族関係などの背景があるわけですから、

統合失調症の方への支援という括りでこの記事を捉えるのは、たぶん的外れです。

あくまでも一人の利用者との関わりの例として読んでいただけると幸いです。

他の関わりの例もよければ参考にどうぞ

【実例】障害者福祉の仕事 就労継続支援事業編1

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